宇都宮駅

我々RoshiとTaka が訪れたのは某年9月中旬の祝日だった。
JR宇都宮駅に降り立ったのは午前10時半頃で何とも言えぬ蒸し暑さであった。
例年ならば残暑も影を潜め秋風の薫る頃だろうが、この年の残暑は天気史上でも稀な程に長かった。
駅ビルを出ると蒸し暑さが余計に身に染み、これから先が思いやられる。


二荒山神社

何はともあれ我々二人は宇都宮のシンボルと名所ガイドに紹介されている「二荒山神社」に詣でることにした。
JR宇都宮駅前からタクシーで向かった。
道路を右左しながら10分程でビルの谷間に突如と言う感じで鳥居が現れる。
鳥居の左右そして向かい側もビルまたビルである。その昔は遮るものなど無かったろうに現在はビル群に鳥居が遠慮している風でもある。
それでも境内は祝日のせいか御宮参りの家族で賑わっている。あちらこちらで写真を撮りビデオを回している。やはり宇都宮市民のシンボルであるのは確かなようだ。
ところで「二荒山神社」の読み方がお分かりだろうか?
世界遺産の日光にも同じ名前の大神社が有るが、そちらは「ふたらさん神社」、こちら宇都宮は「ふたあらやま神社」と読む。我々も神社縁起を読むまでは知らなかった。


餃子を喰おう

二荒山神社の参詣を済ませ、ちょうど昼飯時になった。
宇都宮のシンボルと言えば餃子もその一つ、と言うより代表格である。
神社の直ぐ傍に評判店「みんみん・本店」があるので行ってみた。凄い行列である。
ザッと数えただけでも70人くらいは居るしタクシーで乗り付ける人も居る。我々二人は物を食べるのに行列に並ぶ程の拘りは無いので他の店を探す。
「みんみん・本店」先の路地を入ると「正嗣・宮島店」が有った。この店も評判店であるが昼食時なのに何故か“準備中”の札が下がって居る。


宇都宮餃子館


仕方が無いので両店に挟まれる形で営業している「宇都宮餃子館・二荒店」に腰を落ち着けた。
この店も「みんみん」や「正嗣」からあぶれた人達で結構賑わっている。
写真の餃子は右からホタテ、エビ、シイタケの焼餃子である、と言っても写真では違いは分からないと思うが食べても違いが分からない。エビ、ホタテはその気で思い込んでやっとそれらしい味がする、と言う程度である。中でもシイタケがどうにか我々二人には食感も味も頷ける気がした。


市内迷所?

昼食を終え次ぎに向かったのは「およりの鐘(宝蔵寺)」と「大豆三粒の金仏(善願寺)」である。(それぞれの由来は省略させていただきます)
この二ヶ所は宇都宮商工会議所HPの名所ガイドによればJR宇都宮駅からそれぞれ徒歩3分、10分と紹介されていてる。
しかし「およりの鐘」は駅から主要道119号を辿り田川に掛かる「宮の橋」の直ぐ傍に位置しているが、とても3分では見付けられない。
「大豆三粒の金仏」にいたっては10分どころか20分でも観光客には見付けられないだろう。
そして両寺とも名所ガイドに載っているにもかかわらず参拝客は殆ど居ない。
決してうらぶれた感は無いが影が薄いのは隠しようもない。
商工会議所の名所ガイドに掲載を了承している以上はもう少し創意工夫が有ってもよいのではないだろうか。


宇都宮タワー 八幡山公園

そして旅程一日目の最後に訪れたのは「八幡山公園」である。
ここは観光客の為の公園ではなく市民の憩いの公園である。園内には電波塔の宇都宮タワーと子供達の為の施設がある。
先ずは宇都宮タワー、単に東京タワーのミニチュアではあるが祝日なのに入場者を見掛けない。展望台に昇ってみたが宇都宮市街を360度見渡せる以外にどうと言うことはない。
次ぎに吊り橋風の橋を渡ってみた。そこは子供達の為の遊具や施設を整えた広場である。
こちらはそれなりの賑わいをみせていたが母子連れは見掛けたものの父親の姿は殆ど見掛けない、ハテ?
この公園の直ぐ隣が競輪場である。父親は競輪、母子は公園でそれぞれ遊びましょうという事なのかと考えたのは旅行者の単なる穿ち過ぎなのだろうか。
それは兎も角としても、この公園には数百本の桜が有るとのこと、春には沢山の人達で賑わうのだろう。


大谷資料館

二日目は朝9時過ぎにホテルをチェックアウトした。外は前日同様に蒸し暑く時折雨も落ちてくる。
この日の最初の目的地は「大谷資料館」である。この資料館は栃木県の特産物で名高い大谷石の採掘跡を公開している施設である。予め資料館に確認したところバスの便が悪く、タクシーが良いと聞いたのでJR宇都宮駅前からタクシーに乗った。
しかし、運転手に「大谷資料館」と告げたところ『そこは何処』と反対に聞き返されてしまった。
取り敢えず大谷町まで行けば何とかなると発車、30分くらい走り迷いながらもどうにか到着した。
資料館入り口には親爺さん一人が座り入場券を売っている。
ここで本当に喜多郎のコンサートや寛済のファッションショーが開催されたとは信じ難いほどだ。
採石場跡の入り口を潜ると直ぐに下り階段である。下りる程に湿った冷気が漂い地上の蒸し暑さが嘘のようである。入口の案内板によれば年間を通して14度前後とあったがそれが実感できる。


大谷資料館地下採掘場跡

なおも下ると大きな広場に出た。これが大谷石を採掘した後の空間である。このような空間が幾つもある、そしてとても幻想的である。黄色い電球の照明も幻想感を際だたせる。
空間の下に池が広がっているところもあり、地下水が流れ込んでおりこちらは神秘的ですらある。
先ほどから地鳴りのような音が聞こえる。相棒のTakaさんと不気味さを感じながら地上へと戻ると、そこは豪雨で雷が凄まじい勢いで吼えている。地下の採掘場跡で地鳴りと思ったのは雷だったのだ。流石に雷の本場だけあって超弩級の迫力である。仕方なく以降の予定を取り止めバスに乗りJR宇都宮駅まで戻ったのだが駅に到着した時には雨は上がってしまった。何という皮肉であろうか。
マァ、それはさておくとしても確かに「大谷資料館」のバスの便は悪い。それでも一見の価値は有ると思うので、これから出掛けようと思う方は呉々もバスの時間を確認して欲しい。


駅ビルの「みんみん」

「大谷資料館」から戻ったところで昼飯時になった。
宇都宮最後の食事はやはり餃子である。
昨夜、駅の構内をブラついていたときに「みんみん」が駅ビルのパセオ1階にあるという看板を見た。我々は迷わずに向かった。昼飯時なのに行列は全く無しである。暖簾を潜り食券の自販機で焼き餃子と水餃子を選んだ。直ぐにテーブルに案内され座ると同時に食券を渡し暫くして先ず焼き餃子がテーブルに置かれた。ここの焼き餃子はエビもホタテもシイタケも無い単なる焼き餃子であるが美味い、本当に美味い。テレビの食べ物番組で言い古されている表現だが『皮はパリっと中身はジューシー』そのものである。評判の高さが分かる気がした。そして次ぎに水餃子が置かれた。期待を持って食した。不味くはないが焼き餃子に比べると数段落ちる。水餃子にして食べさせる工夫がされていないようで味のメリハリが無い。少々残念である。ともかく、「みんみん・パセオ店」の焼き餃子はお勧めである。


今回の旅は雨と蒸し暑さに悩まされた旅であった。
例年なら爽やかな秋風と共に過ごせた筈なのに異常気象に最後まで付きまとわれた。
予定していた見どころも後半は殆どカットであった。写真担当の相棒Takaさんも消化不良気味であっただろう。
しかし、自然には逆らえない。旅行者がどんなに用意周到でも天候のご機嫌までは伺いようがない。暑さは暑さとして受け止め、雨は雨として受け止めるしかないだろう。
実は私Roshiは雨男である、そして暑さも大の苦手である。そして日頃の行いも悪くはないとは思うが誉められる程のこともない。
次回の旅では晴れなくても良いから降らないで欲しいものである。
Takaさんの言によれば写真は快晴よりも薄曇りの方が良い写真が撮れるとのこと。光が強すぎてはいけないらしい。何事も程々がいいようだ。
今回は餃子をたくさん食べたが、餃子はやっぱり焼き餃子かな。もちろん、焦げめ程々。


写真:Taka
文章:Roshi