海ほたる

出掛けたのは4月初旬の土曜日。
目的地は房総の「鋸山」である。
季節は春、きっと桜が満開の筈。
Takaさんと川崎駅前で待ち合わせ車に拾い午前9時ごろスタートした。
川崎臨海部の工場地帯を走り暫くするとアクアライン川崎側入り口のトンネルに進入、幅の広い2車線の道路である。
「海ほたる」までは約9キロである。
アッと言う間に「海ほたる」駐車場に着いた。

「海ほたる」は一見するとまるで航空母艦のような感じである。
アクアライン開通当初は駐車場待ち2〜3時間という時期が有ったようだが現在は流石に当初ほどではないようで我々はスムーズに駐車することが出来た。
それでも続々と車は到着する。
関東近県のナンバープレートはほぼ揃っている。

1階が大型車駐車場とイベントスペース、2・3階が普通車駐車場、4階が各種土産物売場、案内所、5階がレストランと展望デッキである。我々は先ず5階の展望デッキに行く。
海上ということで相当の風を覚悟していたが殆ど風は無い。
風が無い分だけドンヨリしていて見晴らしがきかない。
マァ春のこの時季なので仕方ないのだろう。
見晴らしが良ければ富士山や三浦半島などがクッキリ見えるらしいのだが・・・。
いま来た川崎側を眺めると巨大通気口の「風の塔」がヨットの帆のように見える。
これから行く木更津側は橋上道路が延びている。
帰りに「海ほたる」に寄れるか分からないので取り敢えず土産を購入する。
海ほたる物が沢山あるが我々が買ったのは「海ほたる人形焼」という読んで字の如しの海ほたるの形をした人形焼きである。
無難な選択と言えよう。
そして「海ほたる」を出て一路、鋸山に向かった。




鋸山

アクアラインを抜け館山道を木更津南ICで降り国道127号線を道なりに走る。
これが国道かと思えるほどノンビリとした道である。そして鋸山ロープウェイ山麓駅に到着。
ロープウェイに乗り約4分で山頂駅に着いた。
霞んではいるが、それなりに見晴らしは良い。
山裾が海に没するので329メートルという標高より高く感じる。
山頂駅から山道を5〜6分下ると日本寺出入り口になる。
山頂から寺に入ったのだから下る一方であり楽である。
散策の道沿いに沢山の羅漢像が有る。
この道を千五百羅漢道と言う。
風雨の為か首や手足が欠けている像が幾つもある。
我々俗人の穢れを替わって受けて居るかのようにも見える。
そうこうしている内に大きな広場に出た。
そこで我々を待ち受けていたのは総高31メートルという日本一の大きさの大仏である。
確かにでかい、巨大の一語に尽きる。
風雨に曝されヒビやシミも見られるがそれも幾星霜の証であろう。
しかし、この大大仏の割にお堂が見当たらない。
それもその筈、パンフレットを見ると昭和初期に登山者の失火により国宝仏像や堂宇全てが灰燼帰したとのこと。
誠に残念である。
残念と言えばお目当ての桜が無いのである。
一本も無い訳では勿論ないがあそこに1本こちらに2本といった程度なのだ。
もっと沢山の桜の山を期待していたのだが期待が外れてしまった。

仕方が無いのでロープウェイ山頂駅に戻ることにした。
そこで気が付いた。山頂駅からは全て下りと言うことは山頂駅へは全て上りと言う恐ろしいことに。それでも戻るしかないので上り始める。
直ぐに息が切れる。
Takaさんはさほどではないようだが小生Roshiは膝はガクガク、心臓ドキドキ、汗ダクダクである。日頃の運動不足を痛感する。
散策道で一息し何気なく顔を上げると「あせかき不動」への標識が目に止まった。
出来過ぎだが本当である。
やっとの思いで山頂駅に着き下りロープウェイに乗り麓の駐車場まで来た。
昼はとっくに過ぎていたが食事は未だ摂っていない。
折角辛い思いをしたのだから何か美味い物が食いたい。そこで富津岬に向かうことにした。



あさり飯「魚貝料理たかはし」

国道127号線を佐貫の交差点まで戻り左折し国道16号線に乗る。
多少迷いながらも無事に富津公園に到着。
お目当ての店「魚貝料理たかはし」は直ぐに見付かった。
昼時をずいぶん過ぎていたのでスムーズに席に着けた。
注文したのは「海の幸定食A \2200円」である。
あさり飯、あさり味噌汁、刺身、サザエ壷焼き、なめさんが、お新香がセットになった物である。
どれも美味かったが我々二人が特に気に入ったのは「あさり飯」と「なめさんが」であった。
あさりは大粒で、そのだしがご飯に調和している。
薄味に仕上げてあるので飽きがこない。
そして、「なめさんが」である。これは元々は漁師が船の上で捕ったばかりの魚を細かく叩き味噌で和えた「なめろう」と言う房総地方の郷土料理だと思われる。
これが美味い、絶品である。ネギの風味が丁度いい具合で、ネギがこれ以上でも以下でも美味しくない微妙なバランスで仕上がっている。
大人の味である。これで車がなければお酒に持ってこいである。
欲を言えば食事代が税込み2000円以下なら満足度はもっと高いのだが。




富津公園

食事を終え腹ごなしに富津公園の散策に出掛けた。
とても広いこの公園は道路を境に海側と丘側に分かれる。
海側は主に駐車場になっていて直ぐ海に通じている。
丘側はその丘を中心として丘裾を廻る堀川がありボートなどを浮かべ楽しむことが出来る。
遠目には風情のある川だが覗き込むと一面のゴミである。
興を削がれる。
折角の千葉県立公園であり国定公園の一部でもある。
何とかならないものだろうか。当局の一考をお願いしたい。
それは兎も角として丘に登るとチョコンとした展望台がある。
登ってみる。
見晴らしはいい。360度見渡せる。
しかしどの方向も朧げにしか見えない。
これは海ほたるや鋸山と同じく春のなせる技であり仕方がない。
それでも桜は満開である、とは言っても桜の有る場所は限られている。
その満開の桜の下では宴会中もしくは場所取り中である。
何となく気持ちが和む。
その和みを振り切るように我々は帰路についた。


国道16号線をチンタラと走り館山道に入りアクアラインへと乗り継ぐ。帰りは「海ほたる」を素通りして川崎に向かう。15分もかからず川崎側のトンネルを抜けてしまう。アクアラインの通行料円は確かに高額である。生活道路ではあり得ない。
しかし、ものは考えようである。
観光道路と割り切ってしまえばどうだろう。
一般道を走っていたのではとても15分で木更津には入れないが、精々年1回程度の観光に利用する観光専用道と捉えればそれほど腹も立たない、ような気がする。
しかし、もっと安ければ房総、首都圏の往来に寄与することは間違いのない事実でもある。
今後は徐々に値上げをするらしいが発想が逆である。今の世の中、量販の時代である。
通行料金を下げ沢山の車を誘導する。これが本来の姿勢ではないだろうか。
話が脇道に逸れてしまったがまずは快適なドライブであった。
全走行距離は約160キロ、アクアライン無しでは考えられない快適さであった。

写真:Taka
文章:Roshi