盛岡駅

今回の旅行は02(平成14)年8月31日から9月1日にかけての一泊、私Roshiの単独行であった。
住まいする神奈川も朝晩は多少なりとも涼しく感じられるようになって来たので東北ならもっと涼しさを味わえると思い盛岡を選んだ。しかし、これが大間違いで確かに夜は涼しいのだが昼間は神奈川と全く変わらない暑さである。
冷房の効いた新幹線から盛岡駅ホームに降り立つと暑さが足下から立ち上って来てクラクラする。



盛岡冷麺

先ずは予約してあるホテルにチェックインし、部屋の冷房で涼を取る。
汗が引いたのを機に今回の盛岡行の目的の一つ“盛岡冷麺”を食するためにホテルを出た。
目指すは宿泊したホテルの隣にある「S」と言う盛岡冷麺の名店に数えられる店である。しかし、残念ながらこの店は夜の営業に供え準備中であった。
仕方がないので北上川に架かる開運橋を渡り駅周辺をフラフラと巡っていると『ぴょんぴょん舎』と言う店が目に止まった。
この店も盛岡冷麺の新興勢力として名高い店である。(全部インターネットの評判によればですが・・・)



盛岡冷麺

取り敢えず店内に入って驚いたのは焼肉店のイメージとはほど遠いカフェバーを思わすようなシックな内装と天井の高さである。若い男女、家族連れ、オジサン連れ等々が焼き肉を頬張り、冷麺を食し、アルコール類を飲んでいる。
私も4人掛けのテーブルに案内され冷麺と生ビールをオーダーした。その時に冷麺の辛さを聞かれた。
別辛・激辛・中辛・特辛とあるそうで、私は無難な別辛を注文した。これは冷麺にキムチを直接入れず別皿に持って来るもので適当にスープに加えていき自分好みの辛さに仕上げるというものである。このシステムは盛岡冷麺のお店の殆どが行っているようなので冷麺初心者にはお勧めである。この日は冷麺と生ビール3杯でお腹一杯になったのでホテルに引き上げシャワーを浴び早々に寝てしまった。



市内定期観光バス

翌9月1日も朝から良い天気で気温がグングン上がって行くのが感じられる。ホテルを12時近くにチェックアウトし市内定期観光バスのチケットを買うためバス案内所に向かう。
今回、選んだのは午後からの半日コース岩手県交通の「せきれい号」である。このバスは13:40に盛岡駅を発車し16:55に盛岡駅に戻ってくるものである。観光バスが来るまでには時間があるので盛岡駅前広場に目をやると何かの準備をしている。暫くするとアナウンスがあり、岩手県山田町という土地の祭のデモンストレーションと山田町特産のホタテの無料試食があると言う。そして踊りのデモンストレーションが始まりホタテを焼く香ばしい匂いが漂って来た。町の関係者らしい人達がホタテの試食を勧めるのだが残念ながら観光バスの出発が迫っている。ホタテに未練を残しながらバス乗り場に急いだ。



市内定期観光バス

市内定期観光バスは定刻に盛岡駅を出発した。因みに乗客は全部で6人であった。
今回乗車した観光バス「せきれい号」は全行程3時間15分程度なのでバスを下車して見学する場所は3ヶ所と少ない。



盛岡市中央公民館内池泉回遊式庭園

盛岡駅前を出ると北上川に架かる開運橋を渡り、盛岡城跡の豊かな緑と石垣を眺め、沢山の寺が寄り添うその名も寺町通りを通り一つ目の下車見学地“盛岡市中央公民館”の中にある「郷土資料展示室」を見学した。
資料室内は城下町としての盛岡の歩みや当時の生活、文化財などが分かり易く整然と展示されている。
そして、公民館の外は池泉式回遊公園が造成され小規模ながら落ち着きを見せている。



岩山展望台・啄木望郷の丘

次に向かったのは岩山公園にある「岩山展望台・啄木望郷の丘」である。
ここからは盛岡市内が一望でき、名山岩手山も見えるのだが天気が良すぎて却って霞んでしまい今一つハッキリしない。展望台の直ぐ傍に石川啄木の銅像と啄木・節子夫妻の歌碑があり、啄木の望郷の念がしみじみと伝わって来る。因みに啄木の銅像は出身地の青森県渋民村を向いているそうである。



盛岡市先人記念館

次に向かったのは最後の下車見学地「盛岡県立美術館」「盛岡市先人記念館」である。
この二つの建物は同じ敷地内に建っているが、それぞれに独立しておりバス客はどちらを選択しても自由である。
但し、入場料はバス代金には含まれていないのでご注意を。どちらも見学を希望しなければバスで寝ていようと施設付属の喫茶店で寛ぐのもこれまた自由である。



岩手県立美術館

私は「先人記念館」を選択した。ここは明治以降に活躍した盛岡ゆかりの百数十人の軌跡を紹介している。
有名どころでは新渡戸稲造、米内光政、金田一京介が個別の記念室で紹介され、その他種々のゆかりの人々の歩みが紹介されている。建物はまだ新しく室内空間もたっぷり取られ、各所にソファー等も配置されているので窮屈感がない。
時間が来たので施設を出発、窓辺に「啄木新婚の家」などを望み盛岡駅に帰着し一時のバス仲間に別れを告げた。



新幹線に乗るには未だ時間があるので昨日食べ損ねた「S」に向かった。この店は行列が出来るほどではないが、それでもひっきりなしにお客が来る。
私の頼んだ冷麺も暫くして運ばれて来た。一啜りした、ぬるい。外の暑さを纏った身体を冷麺で冷やそうとした考えは呆気なく崩壊してしまった。まぁ、あれほど込んでいては麺を十分に冷やす時間がないのかも知れないが残念である。
今回の旅は東北の秋を感じようとの目的だったが到着時に涼しさは無く、帰りの冷麺も冷たさが無く運の無い旅になってしまった。しかし、今年の暑さはどこもかしこも異常気温であり東北もまた例外ではなかった訳である。少しの慰めは夜のホテルの室内は冷房が不要なほど涼しかったことだろうか。やはり秋は少しずつ少しずつ近づいて来ているようだ。


写真:Roshi 文章:Roshi 
構成:Taka