傍らのポットに入れし氷塊の
溶ける遅さに少しだけ秋
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長袖の増えし人中我ありて
半袖見付け少し安心
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残暑の日九月が去りて神無月
急な寒さに身を震う秋
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銀杏の木少し黄色に色づいて 官庁街の裾を彩り
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駅ビルのからくり時計の曲変わり
小さな秋を人形が奏で
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いつの間に蝉の音消えて秋近く
残暑の隙間に涼が少しく
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雷の鳴りて雨足早く濃く
辺りを濡らし秋風を連れ
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神代の晩秋の丘風流れ 紅葉彩なす夕暮れの前
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首都高を走りて見えし富士の山
秋を追いかけ冬がそこまで
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赤黄青淡き絵の具をあちこちに
天の絵筆が山肌を染め
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優駿の競いて駆ける菊花賞
終わりて外れの紙吹雪舞い
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ぬる燗の供にサンマを食しつつ
何故かしみじみ秋寒の夜
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親戚が送りしくれたジャガイモに
北の大地の秋がほくほく
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甲斐の朝観光バスに連れられて
腰を屈めつブドウ狩り園
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パソコンの操作を終えて窓の外
いつの間にやら秋が忍びぬ
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パタパタと七輪扇ぐ絵は無けど
サンマ食してしみじみと秋
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小太りのサンマにおろしを山に添え
醤油芳し秋の本番
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暑さ過ぎ秋有り難き涼に居て
夏の思いを指で折りつつ
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肌寒き夜中に目覚めエアコンの
風ではないと知る秋の端
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駐車した車のドアを開け放し
僅かの気配の秋風を入れ
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初秋とは中々言えぬ暑さねど
薄き気配を赤とんぼが連れ
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カーナビに紅葉名所インプット
連れて行かれて思いの外良し
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肌掛けを足すかやめよか思案時 秋に深けり冬に浅かり
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ニュースでは各地の紅葉盛りでも
我が家の小庭枯れ葉落つのみ
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十五夜に二つ欠けたる月の色
恥じらうように控え目に映え
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懸崖に咲いて流れる菊の花
大輪引き立て尚褪せり無き
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デスクから顔上げ見やる窓の外
午が過ぎ去り夕闇の秋
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朝夕が涼しくなりて殊更に 昼の暑さがなお身の辛き
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残暑とは言えど盛りの夏よりも
火照る九月を何と呼ぼうか
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数本の木々に水やる狭き庭
暫しなれども残暑忘るる
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暑く差す西日の中に赤トンボ 飛び去る先に僅かなる秋
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朝夕にほんの僅かの涼あれど 処暑と言うには未だ暑き秋
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秋の日のほの柔らかき陽の光 冬来れるをしばし忘れる |
久々の墓参を叱るかのように 長く延びたる雑草の丈 |
名刹の枯山水に抹茶の香
観光バスの時間気にしつ |