玄関の正月飾り取り外し
酒終わらせて粥の一口
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新年も五日を過ぎてゴミ出しの
収集場所に寒さの塊
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暖かき冬の日差しを背に受けて
猫と微睡む休日の午後
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梅便りちらりほらりと聞こえれど
便り追い抜く冷たき冬風
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立春は暦だけとは思いつつ
春の息吹を何気なく追い
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笑い声隣家の窓から賑やかに
久しき集まり正月の朝
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喪の家に正月飾りの無き朝も
分厚き新聞いつものように
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着膨れて通勤ラッシュの人の中
爽やかな香に誰ぞ人追う
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七草で世間の勤めは始まりて 正月気分がただの一月
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右斜めそして真横に雪の富士 首都高速の季節変わりて
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冬初のコート着込みて通勤の
電車の中で汗を拭きつつ
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降り積もる都会の雪に思案する 大人尻目に子らのざわめき
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暦だけ春へ春へと誘うも 寒の深きは日一日と増し
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真夜中の雨が凍りし駐車場
タイヤに割れる音の冷たき
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元旦の朝に隣家の笑い声 着物の幼子初詣に連れ
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暖かき冬に微睡む猫の背に 長き影引く夕焼けの赤
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懐かしき名画の数々溢れ来る
テレビ画面に年末の幸
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早き朝連れ立ちうらうら散歩道 我と犬との白き息二つ
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順待ちの医院のソファで文庫本 咳に震えて字の揺れ動き
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七五三着物の裾を気にしつつ 母娘で詣る雨の社路
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珍しく節気と合いたる冬の端
秋のスーツに身を縮め行く
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良いことが無かった事を思い知る
卯の年の暮れ十大ニュース |
歯磨きの口に含みし水道の
歯に染み渡る冬の寒さよ |
冬物のスーツを出して虫干しの 樟脳臭の秋にサヨナラ |
首都高のビルの谷間の遠き富士
頂の雪に冬の深きか |
ふぐちりの湯気の向こうに友の顔
冬の寒さを暫し忘るる |