青き空陽のそそぎしも身の寒さ
春を拾いし梅の一枝
桜咲きまた寒戻り桜咲き
梅遅れじと追いつ追われつ
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お向かいの軒下に咲く藤の花
春風に舞い我が車庫に踊る
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窓越しの春の日差しに騙されて
冬の残りを玄関に見る
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全山を桜に覆われ高遠の
城跡に立ち幻のごと
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騒音の少なき日々の連休に
向かいの三味の音渡り来る
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両岸に桜を並べ隅田川
水上バスを迎えつ送り
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御開帳人波多く前に出ず
本堂遠く手を合わすなり
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樟脳の匂いを解いて内裏雛
年に一度の逢瀬親しむ
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みちのくと言えども季節に急かされて
葉桜の先夏の入り口 |
北へ行く新幹線の窓外を
葉桜ばかり点々と追い
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急かされて開花予想に追われつつ
花見はいずこ山へ北へと
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五分咲きの開花予報に何となく ホッとひと息高遠の春
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長丈のコートを短い丈に代え
弥生の声を耳澄まし待つ
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ぽかぽかの陽気に目隠し春の影
冬が少しく隠れん坊する
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暖房の部屋から外への二歩三歩 昨日よりまた少し春増し
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目鼻には一足早い春便り
遠き山から花粉と共に
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溶け残り凍りついたる黒き雪
淡き陽射しの春が穿ちぬ
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日々ごとに気温上がると天気予報
春の去りしか梅雨来たりしか
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仕事終え疲れを友に運転の
横を見やれば躑躅の並木
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房総の山から見えし東京湾
こぼれる桜に遙か霞みて |
満開の桜と競いし五重の塔
東寺の池面に現の二夢
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春冷えを伝える日々の天気予報
それでも忘れず花の若芽よ
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暖房の効きし事務所の中よりも
外の日向に春の一抹 |
宝船龍の背に乗せ天空へ
右肩上がりの明日を待つなり |